なぜ松阪牛ではなく、鳳来牛を扱っているんですか?
内藤精肉店の内藤さん
豊田市で鳳来牛(ほうらいぎゅう)を扱う、内藤精肉店。
その社長、内藤さんに鳳来牛との出会いをインタビュー。
聞き手:鈴木孝明(ルーコ)
- ──
- 鳳来牛は松阪牛や飛騨牛に比べると、マイナーなブランド牛ですよね。
内藤さんは、なぜ松阪牛ではなく鳳来牛を扱っているんですか?
- 内藤
- マイナーなブランド牛って、失礼じゃない?(笑)
- ──
- ごめんなさい。今まで聞いたことがなかったので。
- 内藤
- それなら、三重県で有名な牛と言えば?
- ──
- 松阪牛ですね。
- 内藤
- 岐阜は?
- ──
- 飛騨牛。
- 内藤
- 愛知は?
- ──
- ない。
- 内藤
- ・・・と、いうふうじゃん。そこに「それじゃあかんじゃん!」と、精肉店としては思うんだよ。
- ──
- 愛知にうまい牛肉がない。それじゃダメだと。
- 内藤
- いや、あるんだよ。愛知県にも当然うまい牛肉はあると。
そんで、愛知・・・三河のうまい牛肉を発信できたらいいなぁという想いが、俺の動機だったよね。
- ──
- 地元の牛である必要があったんですね。
- 内藤
- その・・・豊田市って、地方から働きに来られる方、多いじゃん。
- ──
- はい。トヨタ自動車がありますし。
- 内藤
- そう。例えば九州からね、こっちに来た人が「いま俺が豊田で一生懸命がんばっとるで!」って、地元においしいものを贈るでしょ?
豊田で頑張っとるのに、松阪牛や飛騨牛を届けたりする話を聞くと、肉屋としては「ちょっと待って」と思うの。俺は。
- ──
- それはどういう心境なんでしょうか。
- 内藤
- 松阪牛を贈るのもいいことだよ。
「あぁ、うちの子が松阪牛くれた。」というふうに、そりゃあご両親は思うはずだよ。
ただ、豊田市で頑張っとって、愛知県のうまい牛もあるんだから・・・。
たとえば九州から来た人がね、鳳来牛(ほうらいぎゅう)を知って手に取れるように、肉屋としてがんばらないと、俺がかっこ悪いよなぁと。
- ──
- 内藤さん、みけんにすごいシワがよってますよ。
・・・そういった気持ちから愛知県、三河の牛である鳳来牛を扱うことに繋がると。
- 内藤
- 俺の思い込みもあるけどね。でも、愛知のおいしい牛を発信できるお店でありたいって思う。そういう環境をつくるのが、俺らの仕事じゃん。
- ──
- この街で食文化の一翼を担っているぞ、という自負が内藤さんにあるんですね。
- 内藤
- 食の文化っていえば、松阪牛はすごいよ!
- ──
- さっと笑顔になりましたね(笑)
食文化がすごい、ということでしょうか。
- 内藤
- うん。松阪って、町ぐるみで松阪牛を食べることを誇りにしてるよ。
ちゃんと町のなかに松阪牛を食べられるお店があって、そこに住むひとが松阪牛を食べられることを楽しみにしてる。
仲の良いひとや、家族で、おいしい肉を食べて過ごす習慣が根づいてる。
俺からすると、それを誇りにしてるようにも見えるよ。
- ──
- そうした習慣や文化とセットで、ブランド牛は存在しているんですね。
- 内藤
- だから、豊田でも誰かが発信しないと!
そこで内藤精肉店でやってみようと思ったんだね。
松阪までいくには100年かかるかもしれないけど、まずは鳳来牛を販売することが、第一歩。
- ──
- 肉を売るというより、三河のうまい肉「鳳来牛」を発信する使命があった。
- 内藤
- 大げさに言えばそうだね。でも動機はそこかな。
- ──
- 実際に内藤さんは、どのようにして鳳来牛と出会ったのですか?
- 内藤
- 新聞の切り抜き。最初に知ったのは、スタッフが持ってきた新聞だよ。
- ──
- えっ、新聞の記事が最初の出会いなんですか?